FUTURE SOUND OF SPACE BAR/V.A.
"そこには私が求めていた音、匂い、空気感がみんな詰め込まれていた"
文・平田順子(音楽ライター)
text by HIRATA Junko
私がELEKTEL/Astro Note Records主催のウエハラ氏と出会ったのは、今から2年ほ
ど前の“トウキョウ・ニューウェイヴ・オブ・ニューウェイブ”ブーム真只中だった。
当時まだ音楽活動もしておらず、ミニコミを作っていたウエハラ氏は私にとってそん
なシーンでの客仲間だった。個人的にはニューウェイヴという音楽を通ってきていな
かったので、そのブームをクラブカルチャーとライブハウスカルチャーの融合だと誤
解まじりに認識し楽しんでいた。
それからシーンは解体・細分化しライブハウスで彼を見かける機会も減ってきた。なのできっと私とはもう好みが違ってしまっ
たのだろう、と思っていた。
そんなおりにこの『FUTURE SOUND OF SPACE BAR』が届
き、聴いてすぐにその判断は間違っていたことがわかった。そこには私が求めていた
音、匂い、空気感がみんな詰め込まれていたからだ。むしろ、以前よりも私と好みは近づいたのではないかとすら思った。ジャンルにとらわれない雑食性、
音楽に対する貪欲さから発するある種の熱さ、そしてオシャレなサウンドに対する俯
瞰的な視点。こんなすごいオムニバスを作ってしまうなんて!
いつも私の二歩も三
歩も先を歩いて良い刺激を与えてくれるウエハラさん、これからは友人ではなくファ
ンと言わせていただきます。ひょっとするとひょっとして、このオムニバスもまたシー
ンの名称として君臨するほどの影響力を与えてしまうかもしれません。
だって、時代はくり返すんですもの! だとしたら、私はニヤリとしてしまうのです。